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                                    やくも

作家:青舟  サイズ:約5.2*3.6*1.6cm

                                    かもす

作家:青舟  サイズ:約4.0*2.5*1.3cm

                                    さだ

作家:青舟  サイズ:約2.4*1.5*0.8cm

「八雲」「神魂」「佐太」三作の玉の原石は、全て同じ石から生まれました。玉造りの仕事は、加工に適した原石を探し出すことから始まります。青舟は京都府北部の丹後から、はるばる、翡翠の産地新潟県糸魚川まで足繁く通い、玉造り適した石を探しています。現地の石屋さんを巡る事もあれば、時には海岸におり自ら翡翠の原石を採集することもあります。いきつけの店もあり、現地の店主さんに頼めば、e-mailで画像を送ってもらったり、電話一つで原石自体を送ってもらうことも出来ますが、自ら足を運び、己の目で見て品定めをしなければ納得出来ません。それは、青舟の生来の性分なのです。

この三作品の原石は現地のとある石屋さんで巡り会う事になりました。通い慣れたお店でありまして、勾玉の話、翡翠の話やら、あれやこれや盛り上がっていると、店主さんがおもむろに立ち上がり、店の奥から一抱え程もある石を持って来られました。「これは参考までに…」と前置きがあり、見せてもらったのですが、手に取ってじっくりと観察すると、ズッシリとした重みがあり、石目、クラックはありますが、まず目を引いたのは、その深いアオの色合いです。深緑色の発色は申し分なく、表面から垣間見えるトロリとした飴のような質感…。まさに、長年追い求めていた原石そのものです。採集場所は、はっきり教えてはもらえませんでしたが、石の表情から姫川上流の石であろうと推察しました。であるならば、一昔前に採集された石「昔の石」と呼ばれるもので、現在では採集出来ない貴重な石と言う事になります。

店主さんは、前置きの通り、販売する気はないらしく、その日は、すごすごと退散する事になりましたが、あのような石を見せられて、じっとしてはいられません。まさに、矢も楯もいられぬといった状態で、再度、お店を訪ねる事となりました。参考品と言っても流石に、店頭に並べるような石ではないようで、「あの石は…」と店主さんにお尋ねすると「ああ…あの石ね…。」とあまり気は進まないようでしたが、前回と同様、手にとって見せて頂く事が出来ました。再度、石の状態を確認しましたが、以前の見立てに間違いはなく、どうしても譲ってほしいと店主さんに交渉を開始しました。しかし、答えはノー。げっそりと落ち込みながら帰路につきました。ですが、このまま諦めるわけには参りません。日を改め再度、訪問し粘り強く交渉を続けました。玉造り対する情熱を熱く語った事が功を奏したのか、「そこまで、おっしゃるなら…」と最後には店主さんが折れ、渋々ながらも譲って頂く事が出来ました。

このようにして仕入れた貴重な原石ですが、その大きさ故、勾玉に加工する為には、そのまま加工を開始するわけには行きませんでした。まずは原石の中でも工作に使用する部分と使用しない部分を分け、加工出来る大きさに切断します。大きな翡翠になると表面の色は分かっても石の内部の色の入り具合は、ある程度の予測は出来ますが、実際カットしてみないと分かりません。カットを始めててみると、硬いのなんの、石の組織が緻密であった為なのか、カットにかかる時間も具団の倍以上かかりました。切り終わってみると、発色の良い加工に適した部分は4分の1から5分の1程度でしたが、非常に良質の部分を確保する事が出来ました。

この原石から、青舟は“古代出雲の王の御霊を乗せる舟”をイメージし、生み出さされた三作品を布留玉の社では“出雲三作”と位置付けました。三作は古来の玉では最も完成されて形体とされる“丁子頭勾玉”です。作中に見られる糸魚川翡翠独特アオの色彩の働き具合は、出雲で見られる、むらむらと沸き立つ雲の如く入り、”気品”と”威風”を放つ青舟渾身の作となりました。

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